思いやりのある人は誰からも好かれ、羨ましく見えるかもしれません。
ですが、無意識で相手を思った行動ができる人はそれほど多くなく、思いやりを持って人と接するにはそれなりの努力が必要です。
思いやりを重視する国民性
総務庁青少年対策本部は日本、アメリカ、韓国を対象に子供に望む、性格特性を調査しました。
その結果、思いやりを持ってほしいと感じる比率は、日本は61.9%、アメリカが26.7%、韓国が8.7%という結果になっていました。
日本人は世界でも突出した思いやり重視国家なことがわかっています。
思いやりとは?
思いやりとは、他人の気持ちに配慮し、相手が何を望みどんな気持ちかを注意深く考え、接することです。
相手の身になって考えたり、推察して気遣いをしたりすることを意味する言葉です。
思いやりのある人は、相手がどんな気持ちでいるのか考え、察するのが得意です。
そのため、相手の立場に立った行動が取れます。
思いやりのある人とは、相手の様子をよく観察し、相手の気持ちになって気遣いができる人です。
相手の心情を自分のことのように思い、寄り添って物事を考えるので、相手の意見や要望も尊重できます。
「思いやり」は自分自身に対してではなく、他人に対して気持ちを考えたり気を配ったりする際に使う言葉です。
それは、人間同士の距離を縮め、原因が何であれ、苦しみの中にいる孤独を感じなくさせる行動であり感情です。
自分のことだけではなく相手のことも気遣ったり配慮した方が、良好な人間関係を気付きやすいといえるでしょう。
お互いに相手の気持ちを考えたり配慮したりする心を持つことが良好な人間関係を築く上で重要です。
人から好かれたり嫌われたりするのには、それなりの理由があるものです。
周りの人に対して優しく接したり気配りをしてくれたりする人は好かれますし、自分のことばかり考えている人は嫌われてしまうことが多いかもしれません。
どんな人に対しても気を配る心を持って人は誰からも好かれます。
コンパッションという言葉はラテン語から直接来ており、”共に苦しむ “と訳されています。
このことから、思いやりとは、誰かの否定的な感情や他人の苦しみを感じることだとも定義されます。
そして、この感情とともに、他人の苦しみを和らげるために行動することも思いやりに含まれます。
同情や共感は思いやりに似ており、他者の感情を感じ、理解する個人の能力です。思いやりのある行動がこれらと異なるのは、誰かを助けるために行動したいという願望と能力である。
多くの人は利他主義もよく知っています。これは、他人の苦しみを和らげるという無私の行為であり、多くの場合、同情が動機となっています。
多くの場合、思いやりによって動機づけられますが、他の要因によって動機づけられることもあります。
人間には本来、思いやりの心が備わっており、誰かが苦しんでいるのを見ると、その感情が湧き上がることが多くあります。
思いやりの感情が生まれると、人の心拍数は遅くなり、オキシトシンのような絆を深めるホルモンが分泌され、脳の領域は共感、気遣い、喜びを示します。その結果、苦しんでいる人の痛みを和らげるために助けたいと思うようになります。
反対に、思いやりのない人は相手の立場になれない人です。
真の優しさを持っている人は、損得勘定を持たないので見返りを求めません。
「これだけ尽くしてあげたのに!」
「どうして感謝してくれないの?」
という人は思いやりがない人と言えるでしょう。
独り善がりな親切は相手に嫌がられますが、親切にしている人なりに相手の気持ちを真剣に考えている場合は「思いやり」になります。
ただし、相手からすると親切心の押しつけになってしまうため、思いやりが必ずしも喜ばれるとは限りません。
とはいえ、相手が自分を考えて行動をしてくれること自体はうれしいものです。
親切にされた側は相手に何かを返そうと思えるでしょう。
お互いへの思いやりにあふれているコミュニティでは人間関係も円滑に進みやすく、ストレスが少ない傾向にあります。
思いやりがある人は相手の立場になって考えることができるため、デリカシーを持っています。
お互いのパーソナルスペースを守りつつ気持ちいいコミュニケーションが取れ、友達としても仕事相手としても信頼のある関係性を築けるでしょう。
思いやりの種類
思いやりは、他者への思いやりと自己への思いやりという2つの主な形で現れることが多いです。その違いは、思いやりが誰に向けられるかにあります。
他者への思いやり
他者への思いやりは、誰かの痛みや苦しみを感じ、自分の行動でそれを和らげたいと願うことです。
この種の思いやりは、慈善寄付、地元のシェルターでのボランティア活動、困っている友人に親身になって耳を傾けるなど、大きな行為にも小さな親切にも表れています。
人間として、ある種の感情的体験がどれほど重荷で孤立したものであるかを理解しているため、私たちは本来、他人の苦痛を和らげるようにできています。
思いやりが自然に身につく人もいるかもしれませんが、思いやりを実践することは、練習によって培われるスキルですです。
セルフ・コンパッションと自分への語りかけ
セルフ・コンパッションは、あまり認識されていませんが、特に多くの人が思いやり疲労を経験している世界では、同様に不可欠でです。
私たちは、自分も思いやりに値するということをしばしば忘れてしまいます。
困難に直面している友人や愛する人に向けるのと同じ優しさや理解を、自分自身にも向けるのは難しいことです。
セルフ・コンパッションとは、苦境に陥っている他の人にするのと同じ優しさ、気遣い、理解を持って自分に接することです。
セルフ・コンパッションには、自己を思いやり、私たちが共有する人間性を認識し、苦悩の瞬間にマインドフルネスを取り入れることが含まれます。
「瞑想し、自分の否定的な感情をジャッジメントせずに受け入れるという単純な行為は、しばしば、その感情を消し去るという直感に反する効果をもたらします」 –ローリー・サントス博士
セルフ・コンパッションができる人は、幸福感、人生の満足度、モチベーションが高いという研究結果があります。
また、より健康的な人間関係を築き、不安や憂鬱のレベルが低く、心身共に健康になります。
困難な時期にセルフ・コンパッションを受け入れることは、レジリエンスを(心のしなやかさ)高める強力なツールとなります。
思いやりのある内なる対話を育むことで、離婚や経済的苦境に直面したり、転職に踏み切ったりといった人生の逆境を、より楽に、より優雅に乗り切ることができます。
日常生活で思いやりを育むには、忍耐と自分への優しさが必要です。そのプロセスは徐々に進んでいきます。ここでは、慈愛にアクセスし、慈愛を感じるのに役立つ練習法をいくつか紹介します。
慈愛の瞑想
ラビングカインドネス瞑想、またはメッタ瞑想は、自分自身と他者の両方に対する思いやりを育む強力な実践法です。
これは、自分自身に対する慈愛のフレーズを暗唱し、それを愛する人、知人、そして私たちが困難を抱えている可能性のある人にまで徐々に広げていくことを含みます。
朝の日課に「自己を慈しむ心を持つことができますように」というようなフレーズを取り入れることで、その日一日を慈しみの心で過ごすことができます。
「私はよく、私たちのこの大地のような身体を使って、ハートの練習の土台を作り、イメージや微笑みの感覚を使って、体現されたメッタを実際に感じられるように柔らかくするのが好きです。
そこでまず、笑顔の曲線が、大きく開けた、鮮やかな青空の中に広がっている様子を思い描いてみてください。そして、あなたのマインドがその空と融合できることを感じ取るのです…頭のてっぺんを開いて…笑顔の曲線で満たされた空のような気づきのマインドを感じ取るのです…そのマインドの開放性、受容性、明るさを…” タラ・ブラッハ博士;Tonglen:根本的な思いやり。
内なる批判を和らげる
私たちの多くは、自分は十分でないという重苦しい感情にさいなまれたり、自分には本質的に何か問題があると思い込んだりしています。
このような経験は、私たちに欠陥や悪いところがあるということではなく、むしろ私たちの文化における苦しみの一般的な現れであることを認識することが重要です。
自己判断の声が自分の中に生じていることに気づいたら、そっと尋ねてみましょう:
「今、この瞬間の自分に優しくするとは、どんなことだろう? 」
内なる批評家の支配を認め、緩めることで、セルフ・コンパッションが花開く道が開かれます。
困難な感情を避けるのではなく、受け入れる
私たちの感情を天候のパターンに見立ててみよう。アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、私たちの内なる風景の嵐をどう乗り切るかについて、深い洞察を与えてくれます。
アクセプタンスの実践では、否定的な自己信念を受け入れたり、絶望に打ちひしがれたりすることは求められません。むしろ、アクセプタンスは、それが何であれ、自分の感情を認め、それとともに存在するよう私たちを誘います。判断や抵抗なしに、自分の感情の正当性を認めます。
困難な感情を受け入れると、セルフ・コンパッションが根付くスペースが生まれます。感情の波に逆らってもがくのではなく、優雅さと回復力を持って波に乗ることを学ぶのです。内なる嵐と正面から向き合うことで、人生の試練を乗り切る強さと勇気を自分の中に発見することができます。
「内なる善を見出すには、あるシンプルな質問を自問自答すればよい:「今起こったことを、私はどう寛大に解釈すればいいのだろう ?なりたい親になるためのガイド」ベッキー・ケネディ著
受容の抱擁の中で、私たちは自由を見出す-欠点も何もかも含めて、完全に自分自身である自由を。そしてその自由の中で、私たちは人間の心が持つ、癒しと成長への無限の能力を発見するのです。
他者とつながり、分かち合う
他者とつながり、自分の経験を分かち合うことは、深い有効性を与えてくれます。
内なる批判は多くの人と共有しているものだと気づかせ、苦悩の中で孤立していると感じる重荷を軽減してくれます。
思いやりのあるつながりによって、私たちは慰めを見出すだけでなく、癒しと理解を促進することができます。
思いやりとは「相手の気持ち」が主体
「思いやりがある人が好き。」
「あなたは思いやりのある人ですね。」
思いやりは、「優しい」に似ている言葉のような気がして、優しければそれは思いやりがあると捉えられるのかもしれません。
でも、ときどき話を聴いていると、あなたの思う「思いやり」が、相手を「思いやれていない」時があります。
「こんなに思っているのに、どうして」
「これだけ尽くしてるのになんで。」
「私はあなたのためにしてきたんだ。」
そういう言葉はきっと、「自分なりの思いやり」から生まれてしまいます。
思いやりはどこまでも「相手を思いやる」ことから始まります。
自分の想い、相手の気持ち
思いやりで大事なことは、自分の想いと相手の気持ちにあります。
思いやることを、
・好きだと相手を思うこと
・好きな想いを表現すること
・好きな想いを形にすること
・好きな想いを行動にすること
だと思う人は多いです。
自分の想いを表現して、相手に優しくしたり、喜ぶことをすることが「思いやり」だと思われています。
確かに間違ってはいません。
好きな想いがあるから、相手のために行動できます。
優しくなれる。
喜ぶことをしたくなれます。
ただ自分が思っている「これが相手のためになる行動」が、「相手が求めていること」だとは限りません。
自分がいいことだと思って、喜ばそうとした行動が、
相手が求めていて、本当に嬉しいことではない可能性があることを、知らなければなりません。
思いやりとは、あなたの想いではありません。
「相手の気持ち」が主体です。
そのことを知らずに、思いやってしまっている(あるいは思いやれていると思ってしまっている)人は、
「こんなに頑張っているのに…どうしてわかってくれないの!」となってしまったりします。
どこまでも相手を想像して、相手の求めていることができるということが要です。
どこまでも相手のことを想像していることが、思いやりなんだと思います。
その思いやり(想像)が、相手の気持ちと合っていて、
適切なタイミングで適切な行動ができて「ありがとう!」と嬉しい気持ちになってくれたとき、
それが「相手を思いやれている」ということになります。
思いやりは自分主体のものではない。
相手の気持ちが主体のものになります。
でも自分の気持ちがなかったら、相手を思いやることなんてできないから
自分の気持ちが何より大事なことには変わりありません。
だから自分の気持ちを大事にして、その上で相手が何を求めているのか、
何をすると喜ぶのか、どんな言葉が欲しいのか、行動がいいのか。
考えることが大事です。
有名な格言に
『自分にして欲しいと思うことはみな,同じように人にもしなければなりません』
という言葉があります。
誰も、親切の押し売りをしてもらいたくありません。
自分の好みを知って、本当に喜ぶことをしてもらった時、心から感謝できます。
それなら、相手の好み、好き嫌いを良く知って行動する必要があります。
それが本当の「思いやり」のある人だと思います。
思いやりのない人の特徴
相手の気持ちに鈍感な人は、うっかり相手の気持ちを考えるのを忘れてしまう、不器用な人なのかもしれません。
悪気はないけど、自分のことをやりながら相手の気持ちを考えるという行為が苦手ということもあります。
自分のやることで手一杯で、気が回らないのです。
まずは自分の手を止めて、相手の気持ちを考える時間を定期的に挟むクセをつけてみるといいかもしれません。
自己愛が非常に強い人も思いやりに欠けてしまう可能性があります。
自分のことが大好きな人は、人と話す時でも「いつ自分の話を切り出そうか」と他人の話を聞くどころではありません。
ですが一般的に「優しい」と呼ばれる人は聞き上手であることが多いです。
そのため、相手の話を聞いてあげることは思いやりのある行動と捉えられます。
自分の話ばかりする人は思いやりのない人と思われてしまっても仕方がありません。
また思いやりのある行動はときに自己犠牲を伴います。
自分に対する愛情が強すぎるあまり、自分が損をすることを恐れてしまうと、このような行動はとれないでしょう。
自己愛が強い人は、「こうすれば相手が喜ぶ」と分かっていながら行動できなくなってしまうことがあります。
思いやりがない人は、他人の気持ちよりも自分の気持ちを優先する傾向があります。
他人に関心がなく、相手のための行動よりも自分の思うように行動しようとしてしまいます。
自分が一番でありたいという気持ちや、自分が中心でいたいという気持ちが大きく、
他人の気持ちを考えることができないのが、思いやりがない人の特徴です。
思いやりを持つ効果
思いやりは自分にも他人にもプラスの影響が大きい感情です。
思いやりを育むことは、単に個人的な努力にとどまらず、自分自身や社会全体に広く恩恵をもたらします。
ポジティブ感情が増える
思いやりがある人は、周りをよく見るため、好感を持たれやすくなります。
周りから感謝されたり、頼りにされたりする経験も得るため、ポジティブな感情が生まれやすいと考えられます。
思いやりを実践することは、私たちの脳と感情状態に強力な影響を与えるという研究結果があります。
思いやりの行為は、気遣いや社会的なつながりに関連する脳領域を活性化し、ポジティブな感情の増加につながります。
嬉しいのは、思いやりは固定されたものではなく、年齢に関係なく、練習によって発達し、強化されるということです(神経可塑性として知られるプロセス)。
思いやりのある行動や思考をすることで、感情の回復力を高め、他者とのつながりをより深く感じることができるのです。
ネガティブ感情を減らす
協調性は情緒の安定性に結び付き、結果的にネガティブ感情を減らす傾向があるとわかっています。
思いやりがある人は、暖かい人間関係が増え、情緒が安定しやすいと言えます。また情緒が安定するため、喧嘩や対人トラブルが減り、ネガティブ感情が減るといえそうです。
思いやりは夫婦円満の秘訣
「夫婦円満の秘訣や方法」について、既婚者、結婚経験者にアンケートしたところ
実際に円満だと答えた人の回答で一番多かったのは「感謝や思いやり」という回答でした。
・「なんだかんだ思いやり・感謝の気持ちを忘れないこと」(37歳・女性)
・「感謝の言葉を口にする」(32歳・女性)
・「感謝を忘れない。干渉しすぎない」(31歳・女性)
・「よく話す、笑う、謝る、感謝を述べる」(51歳・女性)
・「思いやる。相手に求めすぎない」(32歳・女性)
「夫婦円満とはどういうこと? 」の質問には
「夫婦円満とは見返りを求めない思いやりがあること」という名言も出ました。
思いやりは夫婦間にもとっても大事なことだということがわかります。
接客業においても思いやりの心は必須
思いやりは、接客をする上でも必要な能力です。
人との関わりの中で発揮される「コミュニケーション力」「臨機応変さ」、そして「思いやり」。
接客や接遇の場でも非常に優先度が高い項目なのです。
思いやりはリーダーに持っていて欲しい素質
300人の女子に、ついていきたいリーダーとついていきたくないリーダーの特徴を聞いたところ、
ついていきたいリーダーに持っていて欲しい素質の第一位が「思いやり」という結果になりました。
経験や体力面だけでなく、チームワークをとる中心人物であるリーダーには思いやりの心が重要視されることがわかります。
では逆についていきたくないリーダーとは…?
結果は第一位が「独裁的」という「思いやり」とは真逆の結果に。
やはりリーダーには決断力だけでなく、協調性も必要なようです。
思いやりのある職場文化の創造
思いやりは、協力的で前向きな職場文化を育む上で重要な役割を果たします。
愛情瞑想や思いやり瞑想のような実践が、従業員のストレスや 燃え尽き症候群を 軽減するという研究結果もあります。
思いやりを職場に取り入れることで、組織はより良いメンタルヘルスを促進し、仕事の満足度を向上させ、同僚間の対人関係を強化することができます。
思いやりのあるリーダーシップと共感は、従業員が大切にされ、支えられていると感じる環境を作り出す。
思いやりは自分と相手を幸せにする
思いやりがある人にとって、優しさとは「与えるもの」です。
ですが一方的に与えるだけで満足をしているわけではありません。
自分から優しさを与えることにより、相手からも優しさが返ってくることを知っているのです。
人に優しくするという行為自体に心地よさを感じている場合もあります。
人に冷たい態度を取ると自分の心まで荒みやすいのと同じように、人に優しさを与えることで自分の心まで豊かになります。
思いやりがある人にとって、人に優しくする行為は自分の心を温める行為でもあるのです。
優しさにより自分も幸福になり、相手も幸福になり、さらに相手から優しさが返ってきます。
ポジティブな連鎖反応を作りだすことで精神的に余裕が生まれ、さらに人に優しくできるようになります。
社会的健康と集団的幸福
社会的健康とは、有意義なつながりを育み、共感を育み、地域社会の中で支えとなるネットワークを構築することです。
思いやりは社会的健康の礎であり、共感的なつながりを促進し、思いやりの文化を創造し、集団的幸福を高めます。
私たちの交流や人間関係において思いやりを優先することで、共感、優しさ、理解が花開く空間が生まれ、より思いやりのある世界に貢献します。
身体の健康
思いやりは精神的な健康に良いだけでなく、肉体的な健康にも役立つことが研究で示唆されています。
定期的に思いやりを実践している人は、炎症レベルが低く、心血管系の健康状態も良好であるという研究結果があります。
親切や思いやりのある行為は、体内で快感ホルモンの分泌を促し、私たちの全体的な健康と幸福感を高めてくれます。
日常生活の中で思いやりを育むことで、他者とのつながりが強まるだけでなく、自分自身の健康も促進されるのです。
思いやりを身につける方法
より思いやりのある人になるには、練習が必要です。
苦しみは誰にでも存在することを認識することが大切です。
他人にも自分にも親切に話すこと、過ちを犯したことを謝ること、批判せずに話を聞くこと、困っている人に助けを提供することなどは、より思いやりのある人になるための素晴らしい小さな一歩です。
何気ない会話を大事に
思いやりの基本は何気ない日常の会話です。私たちは日々の雑談を通して、お互いの心の状態や、失敗、悩みを交換していきます。
・食事を一緒に取る
・仕事中何気ない日常を報告しあう
・プライベートの雑談もする
・自己開示を積極的にする
そうした会話を積み重ねていくことで、お互い信頼できるようになり、本当に困ってることを打ち明けられるようになるのです。
しぐさから読み取る
思いやりがある方は、相手のちょっとしたしぐさから、相手の気持ちを想像して行動していきます。
例えば、相手が上着を羽織ったら、空調が寒いサインです。温度をあげましょうか?と配慮していきます。
会話をしているときに、相手の声のトーンがあがる瞬間があったら、その話題をもっと話したい証拠です。質問をしたり、相手の発言を繰り返して、会話が続くように配慮していきます。
このように、思いやりがある方は相手のちょっとしたしぐさや、表情の変化を大事にしているのです。以下のしぐさと本音について理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。
声をかける
思いやりがある人は、積極的に声掛けをしていくことで、相手の状況を確かめていきます。
・困っていることはありますか?
・もしかして今、悩みがある?
・何かあったら相談してね。
・最近調子はどう?
このような声掛けをすることで、小まめに相手の心情を把握し、相手が困っていたら、積極的に助けていきます。
共感力をつける
私たちは自分の気持ちをわかってもらえるだけで随分と気持ちが楽になります。気持ちを分かってもらえると、孤独感や疎外感が改善され、肯定されたという気持ちになります。
悩みを抱える人、困った人がいたら、人の話を聴いて共感するだけでも充分思いやりがある行動になります。共感力をつけるには以下のような意識が大事になります。
・相手の立場に立ってみる
・何はともあれ肯定的な姿勢で傾聴する
・自分の価値観をいったん脇に置く
・社会的な価値観で測らない
温かいまなざしで接する
目は口ほどにものを言うということわざがあります。温かいまなざしは、相手の心をいやす効果があります。例えば、福祉の世界では、
・目線を平行にする
・場合によってはしゃがむ
・2~3秒程度、穏やかに目を合わせる
などの訓練をしていきます。そうすると相手は私にきちんと向き合ってくれている…と思いやりを感じるのです。
無条件の肯定的態度
冷たい印象を持たれる方は、条件付きの人間関係を築く傾向があります。条件付きの人間関係とは、
・成功している人とだけ話す
・肩書が良い人だけやさしくする
・かわいい,かっこいい人だけ良い顔をする
・点数が良い人だけ褒める
これらの傾向を意味します。条件付きの人間関係を築く癖がある方は、うまく行っている時だけ、いい顔をするので、思いやりがない印象を持たれるのです。これに対して無条件の肯定ができる人は
・失敗に寛容である
・肩書にこだわらない
・容姿に左右されない
・立場に関係なくフラットに接する
これらの特徴があります。このような安定した肯定的な態度がある人は、思いやりであふれています。
他者を尊重する心を育てる
私たちは、価値を感じないものはいい加減に扱ってしまうものです。
この点、思いやりがない方は、相手の欠点、失敗、短所をたくさん見つけてしまいます。マイナス部分ばかりを見けると相手に価値を感じることができず、思いやる気持ちが薄れていきます。
逆に、思いやりを持つ人は、相手の長所、良いところ、尊敬できる点をたくさん見つけ、相手の価値を感じます。その結果、大事にしようという気持ちが育ち、思いやりをもって接することができるのです。
自分を尊重する心を育てる
私たちは自分が嫌いな状態では、相手に優しくすることは困難になります。自分が嫌いな状態は心の中がすさんでいる状況です。そのため自分のことで、精いっぱいになってしまうのです。
例えば、砂漠でのどがカラカラな状態で人にやさしくなれるでしょうか?中々なれないと思います。
思いやりがない時は、自分に余裕がない状態の方が多いのです。そのため長期的な視点では自己肯定感をじっくり育てていくことが大事になります。
思いやりがある人の行動や発言をまねる
思いやりを身につけるためには、お手本となる人物を見つけてまねるのが近道です。
あなたの周りに、いつでも人に親切な人気者はいませんか?
周りに安心感を与えてくれるような優しい人を見つけて、仕草やコミュニケーション方法を学びましょう。
特にコミュニケーションにおいて、話している相手にどんな言葉を与えているのかは勉強させてもらうことができます。
思いやりのある人ならではの着眼点や、相手によって言いかえるニュアンスなどを学び、自らのコミュニケーションに反映させてくださいね。
相手に見返りを求めない
親切とは、見返りを求めないことです。
優しさに見返りを求めてしまうと、すべての行為は打算的なものになってしまいます。
思いやりのある人間になるために、優しさを与えるときには相手からの反応にはいい意味で期待をしないように心がけてください。
「ポジティブな反応があったらラッキー」という程度の気持ちで構えておけば、相手への感謝の気持ちも高まります。
人に思いやりを与えるのは、あくまで自分のためという意識を持ちましょう。
「人に優しくしている自分」を愛せれば、見返りがなくても苦にはなりません。
思いやりを持つためには、まずは「人に優しくしたい」と思えることが大切です。
そのためには自分自身の精神的な余裕が必須であり、場合によってはライフスタイルから整える必要があるでしょう。
人に優しくするためには、まずは自分自身に優しくしてあげることを忘れないでください。
優しさは余裕から生まれます。
謙虚さ
優しさを与えるときには謙虚さも忘れてはいけません。
誰かに何かを「してあげる」という意識ではなく、お互いが気持ちよくなれる関係性を探していきましょう。
相手の様子をよく見る
思いやりのある人になるためには、まず相手の様子をしっかり観察することが重要です。
「疲れているみたいだから少し休憩したら」などと声をかけ、気にかけていることを示すだけでも、相手は「大切にされているんだ」と感じます。
相手の気持ちになってみる
相手の様子をよく見ることができたら、次は相手の気持ちになってみましょう。
友人や職場の同僚など、いつも元気ハツラツとした人がやけに静かだったら、それはなぜなのか考えます。
もしそれが自分であれば、嫌なことがあったのかな、落ち込むことがあったのかなと考えられるはずです。
聞き上手・気配り上手になる
思いやりのある人は聞き上手です。
「相手に気持ち良く話させてあげよう」という思いから、相手の話をしっかり聞きましょう。
話をよく聞いているので、結果的に気配りも得意になれます。
「前にこれ好きって言ってたよね? あげる!」といった気配りができるのも、思いやりのある人の特徴です。
常に感謝の気持ちを忘れない
思いやりのある人は、周囲に対して感謝の気持ちを忘れません。
「周囲の支えがあるからこそ今の自分がある」と思っているので、
他人が自分のために何かをしてくれた場合、素直に感謝の気持ちを伝えられます。
思いやりはありすぎてもいけないのか?
思いやりは一般的に肯定的な特質と考えられていますが、境界線を保ち、他人の苦しみに圧倒されないようにすることが重要です。
思いやりの疲労、燃え尽き症候群、感情的疲労は、自分自身の幸福よりも他者のニーズを一貫して優先させた場合に起こる可能性があります。
セルフケアを実践し、健全な境界線を設定することは、思いやりのバランスのとれた持続可能なアプローチを維持するために不可欠です。
思いやり対共依存
他者との交流において、思いやりと共依存の違いを理解することは、有意義なつながりを育むために不可欠です。
一見似ているようでも、両者は異なる動機から生じており、私たちの幸福や人間関係に大きな影響を与える可能性があります。
では、どうすれば両者を見分けることができるのでしょうか?
あなたの「助け合い」の原動力は何ですか?
他人をサポートしたり、援助したいと感じるのはなぜか、振り返ってみてください。
その人の苦しみを和らげ、幸福を促進したいという願望に純粋に突き動かされているのか。それとも、自分自身の価値を確認するために、相手の問題を解決しようとばかりしていませんか?
このような質問を自分に投げかけてみることで、自分の真意を明らかにし、自分の行動の源を理解することができます。
ジャーナル・プロンプト
最近、あなたが大切な人に支援や援助をしたときのことを思い出してください。
援助の手を差し伸べたきっかけは何でしたか?
その交流の間にあなたの中に生じた感情を、少し時間をとって抱きしめてください。
あなたが手を差し伸べたとき、温かさとつながりの感覚がありましたか、それとも他の感情が表面に出てきましたか?
健全な境界線を築く
「思いやりのある人は、必要なものを求めます。必要なときにはノーと言い、イエスと言うときには本気である。彼らが思いやりがあるのは、境界線が彼らを恨みから遠ざけているからだ」- ブレネー・ブラウン著『ライジング・ストロング:再会。ランブル。革命。
人間関係の中で、あなたがどのような境界線を設定しているか考えてみてください。
他人をサポートしながら、自分のニーズや優先事項を主張できているだろうか?それとも、境界線を決めるのに苦労し、しばしば圧倒されたり、他者に依存していると感じたりしていませんか?
健全な境界線を理解し維持することは、バランスの取れた尊重し合える人間関係を育む鍵です。
思いやりのある人
- 親切で正直な方法で、自分が必要としていることを率直に表現する。
- 自分の限界とニーズを尊重し、必要ならノーと言うことができる。
- 約束や約束を守る
ジャーナル・プロンプト
人間関係で自分の境界線が試されたと感じたときのことを思い出してください。そのとき、あなたはどのように対処しましたか?
自分の境界線をしっかりと守ったときに現れた、弱さや強さの感情について振り返ってみてください。
他者とのつながりを保ちながら、自分のニーズを尊重する方法を考えてみましょう。
感情的な課題に対処する
人間関係の中で、感情的なストレスや逆境にどう対処するかを考えてみましょう。
他人の問題によって自分が感情的に消耗していることに気づくか、それとも自分の幸福を気遣いつつサポートを提供できているか。
自分の感情的回復力を探ることは、セルフケアを優先し、他者に提供するサポートに制限を設ける必要がある場合に気づくのに役立ちます。
ジャーナル・プロンプト
目を閉じて、他人の感情に圧倒されたと感じた瞬間を思い浮かべてください。
その経験を思い出しながら、体の感覚と自分の中に湧き上がる感情に気づいてください。
深呼吸をし、困難な時に慰めと安らぎを与えてくれたセルフケアの実践方法を、そっと探ってみてください。
あなた自身の中に、レジリエンス(回復力)を優しく思い出させてくれるものはありますか?
思いやりと共感の違い

共感と思いやりという言葉は、しばしば同じ意味で使われてきました。
ですが、特に苦しみに直面したときのレジリエンスを理解する上で、この2つの概念を見分けることの重要性が、新たな証拠によって浮き彫りになってきています。
共感とは、他者が感じていることを感じ取り、その感情に深いレベルで共鳴する能力のことです。
一方、「思いやり」は「共感」を包含するが、それを超えるものです。他人の苦しみを和らげるために行動を起こそうとする、思いやりや心配りの気持ちが含まれます。
思いやりの本質は、他人が困っているときに助け、支えたいという心からの願いにあります。
「共に苦しむこと」と定義されることもある「思いやり」は、私たちが備えている協調的なケアと相互扶助の可能性を引き出すものです。
それは、他者の経験に同調し、真の気遣いと優しさを提供する私たちの生来の能力を反映しています。
この思いやりの能力は、より共感的でつながりのある世界を創造する可能性を秘めています。
共感は貴重な特性ではありますが、自分のニーズを犠牲にして他人のニーズに応えることだけを意味するのではないことに注意することが重要です。
自分自身の感情やニーズを認識し尊重することは、自分自身とつながった関係を維持するために極めて重要です。
真の共感とは、他者の経験を理解し正当化すると同時に、自分の境界線を尊重し、セルフケアを優先することです。このバランスを受け入れることで、相互尊重と互恵性の上に築かれた、より本物で持続可能なつながりが可能になるのです。
思いやりは幸福への近道
周りの人のために、「思いやりや優しさ」の心で、何かをしてあげると、その心を受けた人は幸せに感じます。
そして、ここが一番大事なのですが、その時は、してあげた自分もとても嬉しくなって、幸せな気持ちになるものです。
これは、誰だって味わえる気持ちです。
他人に思いやりを持って優しく接し、相手の幸福を願うと、
気分が上がり、自分自身の不安を緩和し、幸福になると科学的に証明されています。
本当の思いやりを示すなら、自分と周りの人を幸せにすることができるのです。
ある大学で「思いやり目標と自己イメージ目標」の研究が行われました。
この2つに共通しているのは、「自尊心」に関わる研究だということです。
自尊心とは、自分に対する好ましい評価や感情のことで、自尊心が高いほど幸福感が高いことが分かっています。
自分は価値ある存在だと思える人は、人生もバラ色なのです。
ですが問題は、自尊心を自ら高めようとするのは良くないということです。
なぜなら、自尊心を高めようとして自尊心に執着すると、自尊心が下がることを恐れるようになり、自尊心が脆くなるからです。
こうなってしまうと、人は傷つくことを恐れ、失敗とチャレンジを避けるようになります。
では、どうしたらよいのでしょうか。
思いやり目標をもつことです。
思いやり目標は対人関係にも自己の成長にも良い影響を及ぼします。
思いやり目標について
「思いやり目標」とは、他者の幸福を高めよう、誰かの役に立とうとすることです。
反対に、他者に良い印象を与えよう、有能な人・親切な人などと思われようとすることを「自己イメージ目標」と言います。
思いやり目標が高い場合と自己イメージ目標が高い場合では、行動に違いが出ることもあります。
簡単に言えば、自己イメージ目標を強くもっていると、他者から良い評価を得ることが重要なので、
周囲の目を気にして、相手に嫌われたり、お節介だと思われるのを嫌がったりする傾向があります。
一方で、思いやり目標を強くもつ人は、相手のためになるのであれば、
恥をかいたり、相手から嫌われたりしても、あまり気にしないのです。
例えば、この研究では、混んでいる電車内で妊娠中と思われる女性を見かけたとき、
自己イメージ目標が高いと、明らかに妊婦と分かる場合にだけ席を譲るのですが、
思いやり目標が高い人は、妊婦の可能性がそれほど高くなくても、積極的に席を譲ろうとする傾向がありました。
面白いのは、思いやり目標から来る行動なのか、自己イメージ目標から来る行動なのかを他者は敏感に見分けていることです。
親切であるという評価を得ようとしている行為を他者は、「自己満足だ」と見抜けることが多いのです。
なぜなら、行為者はあくまでも自分が評価を得られているかどうかに焦点が合っているために、
相手が求めていないことをしてしまったり、タイミングがずれてしまったり、必要でないときに手を差し伸べたりしてしまうからです。
反対に、相手が必要としていることを適切なタイミングで行えば、相手もそれを素直に受け取り、気持ちよく感謝できるのです。
そして何よりも重要なのは、思いやり目標から来る行為が、他者の幸福感を高め、
他者も思いやり目標をもって自分の幸福感と自尊心を高めてくれるようになることです。
つまり、自分1人で幸せになろうと思っても幸せにはなれず、
逆に、他者と共に幸せになろうとすると、自分も他者も幸せになれるというわけです。
誰かを幸せにしてあげたい、ニーズを満たしてあげたいと思うことが、私たちの幸せへの近道なのです。
また、思いやり目標をもつ人は、困難に直面したとき、そこから学び、成長しようとする志向が強いことも分かっています。
自分と他者をあまり比較せず、失敗の脅威を感じないからです。
さらに、思いやり目標をもつ人ほど、他者とのつながりを強く感じ、社会的サポートも増える傾向があります。
思いやり目標は、対人関係にも本人の成長にも良い影響があるのです。
それから、思いやり目標は「セルフコンパッション(自分に対する思いやり)」にも関係しています。
思いやり目標が高いと、自分の弱さや失敗を許容でき、相手に弱みを見せたり、上手に甘えたりもできるのです。
逆に、自己イメージ目標が高いと、弱さを他人に見せることができず、周囲にうまく頼ることができません。
当然、思いやり目標をもつ人の自尊心は脆くありません。
自尊心への執着が弱いからです。
幸せになりたいのなら、思いやり目標を意識して、自分自身や周囲の人々に良い影響を与えようとすればよいのだと思います。
その繰り返しが、何よりも私たち自身を幸せに導いてくれるからです。
例えば、目の前で苦しんでいる人に対して「大変だね」と“共感”しているだけだと、こちらまで辛くなってしまいます。
一方で、共感しながらも「何とかこの人の力になりたい」というモチベーションに支えられるのが思いやりです。
不思議ですが、苦しんでいる人のことを思いやる、何とか力になりたいと思うだけで、人の脳が幸せになるのです。
「幸福学」で著名な慶應義塾大学教授の前野隆司先生の書籍によれば、幸福には4つの因子が関わるそうです。
1つ目は「やってみよう!」というチャレンジの因子。
2つ目は「ありがとう!」という感謝の因子。
3つ目は「何とかなる!」という楽観主義の因子。
そして4つ目は「あなたらしく!」という自分を大事にする因子。
それら4因子が噛み合うと幸せになるということです。
思いやりの心で他者と接し、相手の喜ぶことができるなら、良い連鎖が生まれます。
他者との関係の中で感謝の気持ちを持てるような状態だと、すごく幸せ度合いが高くなります。
他者に対して何かするということもそうですし、それに対して「ありがとう」が返ってくると、こちらからも感謝の気持ちが出てきます。
自分も周りの人も同時に幸せにすることができるのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
皆さまの幸せを祈っております。